物体の移動データの分析には、可視化が有効な手段です。しかし、大規模な移動データを地図上に描くと視覚的な混雑が発生し、様々な特性(距離・方向・数量)を把握することが困難でした。このような問題に対して、我々は物体が移動する方向にもとづいてデータの集約を行い、移動の方向ごとに距離分布とその方向に移動した物体の数を表現する可視化手法を開発しました。視覚的表現は地図上に重畳表示され、探索的な移動データの閲覧を可能にします。(国際会議iV2014のプログラムの表紙に採用されました。)
多変量データの視覚的分析において、「データの比較」は重要な作業の一つです。我々は多変量データをひと目で比較できるような視覚的表現を開発しました。異なる尺度水準の変量を同時に表現するために、統計量の表現に広く用いられている箱ひげ図と積み上げ棒グラフを並行座標軸上で組み合わせました。またゲシュタルト心理学のプレグナンツの法則を踏まえた影表現を用いることによって、同一の表現で複数の観点からの比較を可能にしました。(国際会議iV2014でベストペーパーを受賞しました。)
限られた画面領域において高次元データの概観を得ることを目的として、Colored Mosaic Matrixを開発しました。Colored Mosaic MatrixはMosaic Plotを拡張した高次元カテゴリデータの可視化手法です。着色に工夫を施したMosaic Plotを行列状に並べることによって、色から高次元データの特徴を読み取ることを可能にしました。量的なデータをカテゴリに変換して表現するため、レコード数の多い高次元データも可視化して概観を得ることができます。
時刻とともに変化する順位と量を可視化する手法を用いて、流行の始まりや継続などのトレンドを分析するためのツールを開発しました。開発した可視化手法では、矩形の幅と位置を用いて、順位と量の推移を同時に表現します。これにより、従来の手法に比べてデータの全体像と個々の事象の動向についてのより詳細な分析が可能になりました。また、事象の持つテキストラベルから自動的に色相の決定を行うことによって、事象のカテゴリを視覚的に確認することができます。
アンカーマップは2部グラフの描画手法です。我々は2部ネットワークの可読性を高めることを目指して、アンカーマップを提案しました。2部グラフは、エッジが二つの集合を横断するようにノードを二つの集合AとBに分けることができます。アンカーマップでは一方の集合(たとえばA)のノードを「アンカー」と呼び円周上に等間隔に配置します。もう一方の集合のノードは隣接ノードの位置に応じて適当に配置します。
大企業のような大規模組織において個々の活動を把握することは重要ですが難しい問題です。 我々はそのような活動の俯瞰を提供する可視化技術を開発しました。 開発した視覚的表現は階層構造の表現に利用されるTreemapの各セルに活動を表すチャートを埋め込みます。この表現によって、活動の量的な側面と時間経過の側面の両方を同時に見ることができます。 我々はさらにそのような表現を操作するためのツール「Series at a Glance」を開発しました。
ChronoViewは時刻情報を備えたデータの分析を支援する可視化技術です。 時刻情報の表現の仕方には、直線の時間軸上にイベントをプロットする方法や、時間軸を渦巻きにして周期性を見易くする方法など様々なものがありますが、いずれも空間効率があまりよくないため、たくさんのイベントを同時に観察するには不向きです。我々はアナログ時計の文字盤のような平面上にイベントをプロットする方法を提案します。これにより数千イベントを同時に表示し、特徴を比較することが可能になります。
Treemapは階層構造の表現に広く利用されている可視化手法です。リーフを表す長方形はリーフの重みに応じた面積が割り当てられます。 我々はリーフにチャートを埋め込むことを考え、チャートの比較しやすさを目指しています。 比較のしやすさのためには各軸の目盛を統一することが重要と考え、リーフの横幅を均一にしたEdge Equalized Treemapを提案しました。リーフの横幅を均一にするために、従来の空間分割手法に代えて、ボトムアップの構成方法を採用しています。