ネットワーク(グラフ)の視覚的な表現として、ノードを点で、エッジを点をつなぐリンクで表す連結図(node-link diagram)が広く使用されています。しかしながら、連結図ではしばしば視覚的混雑が発生し、ネットワークの構造の把握がうまくできません。視覚的混雑を解消する方法の一つとして、リンクの一部分を省略する(描かない)「部分エッジ描画」が提案されています。リンクの交差が描かれないことで、ネットワークの読み取りやすさを向上させる一方で、読み手には省略部分を推測するという負担が発生します。そのような問題を解決するために開発しているのが「モーフィングエッジ描画」です。リンクを完全に描かれた状態と一部が省略された状態のあいだで変化させることで、ネットワークの読み取りやすさの向上を狙っています。
海鳥はグループや生息地域や活動時期によって移動のパターンが異なるため、様々な条件下で移動データを比較する必要があります。移動データは時刻を伴う位置データであり、多くの場合地図上に可視化することで分析を行いますが、鳥類研究者にとって比較に適した移動データの視覚表現を作成することは煩わしい作業です。そこで鳥類研究者の作業を支援するためのツールを開発しました。開発したツールはアニメーションによって鳥の移動を表現し、Small Multiplesという手法で複数のアニメーションビューを表示します。ユーザーはグループ、地域、時期といった条件を複数組み合わせたSmall Multiplesを自由に作成することが可能です。
海上を運航する船舶が,他船舶に急接近すると乗組員は衝突の危険を感じます。もしも船舶の航路に介入して,船舶同士が急接近しないように航路を変更すれば、各船舶の衝突危険感を低減できます。このとき、介入によって軌跡と衝突危険感がどのように変化したのかを把握できれば、介入の効果や影響を読み取ることができるでしょう。開発した表現手法は、テーパードラインと分割図形を組み合わせたアニメーションを生成し,時間経過と共に色と大きさを変えながら移動する図形から、各時刻における船舶の分布と衝突危険感の大きさが、介入によってどのように変化したのかを把握できるようにするものです。
時刻付きデータの表現手法の1つとして、ChronoViewという手法があります。イベントをイベント群として集約して表現することで、多くのイベントの周期的特性を同時に可視化できる手法です。しかし、イベント群の配置が視覚的表現の周期に依存していることや、同時に表現できる周期が1つのみであることから、未知の周期に対する探索的な分析には向いていないという問題がありました。そこで、ChronoViewに2.5D表現を組み込むことで、様々な表現周期を効率的に観察できるよう拡張しました。3D空間に複数の図を配置し、同一のイベント群のつながりを可視化することで、周期的特性を効率的に探索することを可能にしています。
情報可視化を行うシステムの開発には、プロトタイピングや、実システムへの実装など多くの実装コストが必要です。このことは、情報可視化の利用を妨げる一因となっています。この研究では、そのような実装コストを削減するために、UIにデータフロービジュアル言語を採用した、情報可視化のための開発環境を構築しました。データフロービジュアル言語により、データを視覚的に表現するための変換規則の記述を容易にし、プロトタイピングにかかる実装コストを削減しました。さらに、プログラムへの埋め込みが可能な可視化の実行環境を設計し、開発環境上で作成した可視化処理の実システムへの実装を容易にしました。
重み付き自由木の比較を支援する可視化手法を設計および開発しました。重み付き自由木とは、各ノードとエッジが重みを持ち、閉路がない連結無向グラフです。二つの重み付き自由木の比較分析を支援するために、分析作業を14種類のタスクに分解するとともに、それらのタスクを連続的に行いやすい表現手法を設計しました。比較にしばしば利用されるJuxtapositionとSuperpositionに差や共通部分を重畳表示することで、比較作業を容易にしています。
飛行機や船等の移動体が起こした、危険と思われる異常接近を分析することで、事故を未然に防ぐための知見が得られると期待されます。分析のためには事例の収集が必要になるのですが、大規模移動体データに含まれる接近を一つ一つ観察していくのは非効率的です。そこで、複数の接近の最接近前後の軌跡を重ね合わせることで、観察の効率化を図る重ね合わせ表現を開発しました。また、重ね合わせ表現を組み込んだ異常接近探索ツールを開発し、異常接近探索の効率化を行いました。
気象観測データに代表される時刻と位置に依存する時空間変量を視覚的に表現する手法としては、データの時間軸を表現の時間軸に対応づけたアニメーションがしばしば利用されます。しかしながら、アニメーションには、複数の場所に着目することが難しいとか、複数の時点の比較が難しいといった弱点もあります。そこで、静止画あるいは静止画に準じる表現で、時空間変量を表現する手法を開発しました。あまつぶ手法と名付けた手法は、空間を格子状に分割し、格子の各セル内に時系列の表現を埋め込むものです。
色は情報可視化において重要な役目を担っています。色をデータの視覚的表現として効果的に使用するためには、人間が感じる色の差(色差)を考慮した配色を設計する必要があります。そこで、色差を考慮した配色設計を支援するためにCIELAB色空間を使用して配色設計を支援するツールを開発しました。RGBやHSVとは異なり、CIELAB色空間は空間内の距離と色差が一致しているという性質を備えている一方で、空間が歪な形状をしているため配色設計が簡単ではありません。開発したツールは、CIELAB色空間内における色の位置を視覚的に見せることで、配色設計を行いやすくしています。
多くの人の感情によって生み出される雰囲気を把握したいという動機から、主題地図の一種である「感情天気図」を開発しました。評判分析では2値あるいは1次元的な値が扱われることが多いのですが、人々の感情はより高次元であることを考慮して、8種類の感情を8枚の地図で表現しました。地図上に等高線状の図形を描き、彩度によって感情の量を表現しています。感情の種類や、地域、あるいは時間帯による量の偏りを軽減することで、変化の検出を容易にしています。図は宮城県沖で地震が発生した直後の様子です。東北地方に恐れと驚きが広がったことが分ります。
多変量データの分析を支援するための可視化手法「Blade Graph」を開発しました。Blade GraphはBraided Graphの拡張で、複数のデータ分布の差を強調する着色が特徴です。Blade Graphを利用したケーススタディとして、人々の趣味特性の分析を行いました。妖怪ウォッチに関心のある人はどのような人か、他にどのような事に関心があるのかなどを分析しました。
アマチュア写真家が撮影旅行等を計画する際には,前もってどの撮影スポットに訪れるか決めておくことがあります.我々は,撮影スポットの選定に必要な情報と手順を整理しました.そして,写真共有サイトにアップロードされた写真から情報を生成,提示するツールを開発しました.このツールは,撮影スポットの分布や撮影時間,撮影サンプル等の情報を地図を中心に提示します.これにより撮影スポットの情報を把握しながらスムーズに選定作業を行うことが可能になりました.
物体の移動データの分析には、可視化が有効な手段です。しかし、大規模な移動データを地図上に描くと視覚的な混雑が発生し、様々な特性(距離・方向・数量)を把握することが困難でした。このような問題に対して、我々は物体が移動する方向にもとづいてデータの集約を行い、移動の方向ごとに距離分布とその方向に移動した物体の数を表現する可視化手法を開発しました。視覚的表現は地図上に重畳表示され、探索的な移動データの閲覧を可能にします。(国際会議iV2014のプログラムの表紙に採用されました。)
多変量データの視覚的分析において、「データの比較」は重要な作業の一つです。我々は多変量データをひと目で比較できるような視覚的表現を開発しました。異なる尺度水準の変量を同時に表現するために、統計量の表現に広く用いられている箱ひげ図と積み上げ棒グラフを並行座標軸上で組み合わせました。またゲシュタルト心理学のプレグナンツの法則を踏まえた影表現を用いることによって、同一の表現で複数の観点からの比較を可能にしました。(国際会議iV2014でベストペーパーを受賞しました。)
限られた画面領域において高次元データの概観を得ることを目的として、Colored Mosaic Matrixを開発しました。Colored Mosaic MatrixはMosaic Plotを拡張した高次元カテゴリデータの可視化手法です。着色に工夫を施したMosaic Plotを行列状に並べることによって、色から高次元データの特徴を読み取ることを可能にしました。量的なデータをカテゴリに変換して表現するため、レコード数の多い高次元データも可視化して概観を得ることができます。
時刻とともに変化する順位と量を可視化する手法を用いて、流行の始まりや継続などのトレンドを分析するためのツールを開発しました。開発した可視化手法では、矩形の幅と位置を用いて、順位と量の推移を同時に表現します。これにより、従来の手法に比べてデータの全体像と個々の事象の動向についてのより詳細な分析が可能になりました。また、事象の持つテキストラベルから自動的に色相の決定を行うことによって、事象のカテゴリを視覚的に確認することができます。
アンカーマップは2部グラフの描画手法です。我々は2部ネットワークの可読性を高めることを目指して、アンカーマップを提案しました。2部グラフは、エッジが二つの集合を横断するようにノードを二つの集合AとBに分けることができます。アンカーマップでは一方の集合(たとえばA)のノードを「アンカー」と呼び円周上に等間隔に配置します。もう一方の集合のノードは隣接ノードの位置に応じて適当に配置します。
大企業のような大規模組織において個々の活動を把握することは重要ですが難しい問題です。 我々はそのような活動の俯瞰を提供する可視化技術を開発しました。 開発した視覚的表現は階層構造の表現に利用されるTreemapの各セルに活動を表すチャートを埋め込みます。この表現によって、活動の量的な側面と時間経過の側面の両方を同時に見ることができます。 我々はさらにそのような表現を操作するためのツール「Series at a Glance」を開発しました。
ChronoViewは時刻情報を備えたデータの分析を支援する可視化技術です。 時刻情報の表現の仕方には、直線の時間軸上にイベントをプロットする方法や、時間軸を渦巻きにして周期性を見易くする方法など様々なものがありますが、いずれも空間効率があまりよくないため、たくさんのイベントを同時に観察するには不向きです。我々はアナログ時計の文字盤のような平面上にイベントをプロットする方法を提案します。これにより数千イベントを同時に表示し、特徴を比較することが可能になります。
Treemapは階層構造の表現に広く利用されている可視化手法です。リーフを表す長方形はリーフの重みに応じた面積が割り当てられます。 我々はリーフにチャートを埋め込むことを考え、チャートの比較しやすさを目指しています。 比較のしやすさのためには各軸の目盛を統一することが重要と考え、リーフの横幅を均一にしたEdge Equalized Treemapを提案しました。リーフの横幅を均一にするために、従来の空間分割手法に代えて、ボトムアップの構成方法を採用しています。